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03.『都林泉名勝図会』「凡例」(翻刻)

凡例

一 此書は前板『築山庭造傳』を基とし、京師四方名庭の林泉を聚て、新に『都林泉名勝圖會』と題書す。然れども宮殿・臺榭・山閣・水亭・蝸舎・蓬戸の林泉なを頗多し。餘は他日縁を需て巡覧し、後編に備ふ。
一 諸寺方丈書院の名画名筆、又は什宝虫干の體相の大畧を書するは、其寺院の荘厳、京師の美観也。然りといへども際限あれざれば具に記する事能はず。餘は寺僧に尋て詳にすべし。
一 勝地によつて風流の圖あり。強林泉に寄ざれども其地の風流を彰さんためなり。又典故の繪あり。これも右に准ず。所謂紫野若艸、伏見梅渓、河合納涼、高雄紅葉、大堰川三船等のたぐひなり。
一 林泉に古人の詩哥寡し。故に今時京師に於て名家の詩哥を乞需て多く圖中に釘す。其中に作者自筆の詩哥もあり。誹諧・狂哥も亦これに准ず。
一 畫工は一筆にあらざれば圖毎の印章各姓名あり。是をもつて画師を鮮に知べし。
一 庭造の法則あるは側の亭宅を除て画く。これは林泉の規範となるべきの料なり。法則麁なるは舎屋を圖し風景を専とす。又四季折々の花樹有るは大畧其樹々をしらせん為に時節に寄らずこれを画く。たとへば梅・櫻・蓮・楓あるの類也。
一 法則によつて遠景を収庭中は、都て其遠景を圖し、遠景不用意の庭はこれを省く。又圖毎に人物の画の小大あり。其貌の小大によつて林泉の廣狭をしるべきなり。