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02.『拾遺都名所図会』「凡例」(翻刻)

凡例

一 此書は、前編に漏たるを拾ひあつめて、今の風景をたがはず圖に模写し、其由縁を記し侍る。然れども、佛院の頭塔、末派の子院等は際限あらざれば、咸は載ず。年舊く名の高きを撰で録す。
一 前編の圖中に遠景の畫あり。今これを微細に圖して其封境を精くあらはす。大悲山、牛尾山の類なり。
一 圖畫後編にあって、文談なきは前編に出たり。文談前編に在て圖畫なきは後編に見へたり。両編応照て其全を知べし。大厦に至りては前編に載すといへども、再書して漏たるを補ふ。北野社、東福寺の類なり。
一 古人の居所は舊記、歌書などにより其地を考、これを載す。土人の口称も亦竒なるは除く事あたはず、粗これをしるす。
一 引書の長文なるは、其要を摘で畧書す。
一 洛中、神社、佛閣の圖はことごとく前編に出たり。拾遺は街衢小路につらなる小祠、子院なれば、画するに風景なし。ここによって大社の祭礼を多く図す。又は四時遊観の形勝を写す。
一 圖中の間々に大画あり。あながち名所古跡にかかはらず、其辺の地勢によって風流の景氣を畫するものなり。旅行の人、道に迷ふて里人に聲を上げ尋る体、又は野原を往来するに、暴風に適ふて笠をとらるヽ体などの類なり。其餘は前編の凡例をもって両編を暁し見るべきなり。