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07.御室仁和寺の桜

Source:『拾遺都名所図会』巻四

~御室花見~

 わたしゃおたふく、御室の桜、はなが低くても人が好く、

 御室の仁和寺の桜は「御室桜」の名前で親しまれています。別名が「おたふく桜」。この桜は木が低く、花も低い位置に咲くことから、「花」と「鼻」を掛けつけられた名前なのです。濃いめのピンクが美しい八重桜ですから、名前との落差が非常にユニークです。
 絵は境内にある桜の下で幔幕をはって観桜に興じる人々を描いています。右側のグループの幔幕には「丸に四つ目結い」の紋。羽織を着た、立て膝の男が主人です。脇差しを一本差していますから商家の旦那さんです。右側で手に盃を持っている女性がご新造さん。京都の北部に位置していて、八重桜が咲くということもあり、京都の数ある桜の名所のなかでもシーズン最後の桜になります。今日は名残の桜を見ながら音曲を楽しむ、といった趣向。三味線や琴が見えます。
 左側には、いま来たばかりの女性の一行、かずきを被った女性が二人とお供が数人。仁和寺は門跡寺院ですから、女性ばかりの花見でも安心して楽しむことができるのです。絞りの振り袖を着た娘さんは、今が花盛り。手前の幔幕や左側の千鳥の幔幕からは、娘の姿をひとめ見ようと、男性たちがのぞき見をしています。「綺麗な娘さん、桜にも負けてしませんわ」。少々お行儀が悪いようです。
 こんにちでは花見はカジュアルな服装で出かける人たちが多いようですが、江戸時代にはみなドレスアップして出かけたのです。

From:Yuki NISHINO