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19.粟田口 天王祭

Source:『伊勢参宮名所図会』巻一

 挿絵は『伊勢参宮名所図会』巻一に載せられた粟田神社の例祭の様子を描いたもので、粟田口祭りともいわれます。江戸時代には9月15日行われる祭礼でした。今日では粟田祭の名で知られていて、10月9日・10日・15日に行われています。
 その昔、知恩院にある瓜生石より一夜にして実った瓜があり、その瓜には「牛頭天王」の文字。そこで牛頭天王をお祀りする粟田神社に奉納したとか。ちなみにこのお話は知恩院の七不思議のひとつ。この奉納に因んで行われたのが天王祭なのです。ですから天王祭の天王は、牛頭天王のことなのです。
 挿絵の解説によると、昼夜、2度の渡御があり、神輿や鉾をもって行われ、鉾には瓜などの飾り付けが施され非常に美麗であったといいます。絵の右から2番目の鉾にはこの瓜の飾り付けがされた鉾が見えます。昼には粟田神社で、夜には白川橋を越えて川沿いを知恩院方面に向かい、一つ目の橋の上で鉾の曲持ちが行われ、それぞれの持ち手が技を競いました。絵は丁度、紅葉の飾り付けをした鉾の持ち手が神妙な顔つきで技を披露しています。川沿いには篝火が焚かれ、技の一部始終を見ることができるようになっています。乳飲み子を抱いたお母さん、子たちを連れたお父さん、孫を連れたお祖父さん、見物客の中には子供の姿も多く見えます。

From:Yuki NISHINO