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35.西本願寺、七夕の篭花

Source:『都林泉名勝図会』巻一之坤

~西六條本願寺對面所、七夕篭花~

 西本願寺は浄土真宗本願寺派、浄土真宗の総本山です。現在の寺地は、天正19年(1591)、豊臣秀吉より寄進された土地であります。
 絵は、江戸時代、7月7日、七夕の行事であった「七夕の篭花」の様子で、現在では目にすることはできません。元和2年(1616)の七夕に、南都の浄教寺から瓶花が献上されたことにはじまります。この翌年には、浄教寺以外の数ヵ寺が献花に加わり、本願寺の七夕の行事として定着していったと伝わっています。
 また、浄教寺七世の空信が本山五世の綽如上人にお仕えしたとき、草花を好んだ上人のために門徒たちが上京のたび毎に手桶に草花を入れて献上した、と伝えております。
 篭花はそれぞれに趣向がこらされていて、人の丈ほどもある大ぶりのものであったこと、絵から窺うことができます。また、絵を見ると、対面所の縁側に飾られた篭花を少しでも近くで見ようと、篤信者たちで賑わっている様子がわかります。篭花の前には献上した寺名が書かれた札が置かれています。観覧者のなかに僧侶の姿が見えるのは、他の寺院がどのような趣向の篭花を献上しているかを見て、来年の構想を練っているのでしょうか。「○○寺さんのは、えらい立派ですなぁ」、「いやいや、うちのも負けてしません」。
 右端に見える枝振りが見事な献花は、「松竹梅」の趣向。七夕にあわせて大きな竹が中心に据えられています。あまりの立派さに子たちも見入っているようです。

From:Yuki NISHINO